リア充を気取ってたら爆死したでござる、にんにんっ。2日目その2

普通の小説と違って作文みたいになるのは、僕の語彙とかそーゆー力量がないのに加えて、僕以外のキャラがあんま喋ってないからかなと思った。
なんか独白みてぇだ。



花火も終わり民宿に戻り、さて麻雀の続きをするかと向かい合ったところで、
「下に集まってー!」
酒井先輩の声が響いた。2日目の夜に飲み会を行うらしいと聞いていたので、潰されるんじゃないかと戦々恐々の気持ちで下の広間に集まった。
そこには、畳敷きの30畳ほどの長方形のような広さに長テーブルが2つ、テーブルの上には酒とスナック等のつまみが置いてあった。完璧な飲み会の態勢である。
「まぁてきとーに座ってください」
そう言われてもなぁ、奥の長テーブルには3年が固まってるから手前のテーブルの周りに集まることになる。みんなさっさと動けばいいのに。
「どこに座ろっかなー」
と言いつつ端っこの方にすわる。対面に吉野、横は望月さんというまぁ特に問題なさそうなメンバーだった。
「そーいや3バカ誰になるんかなー」
「あーもうそのこと考えたくないよ絶対俺だって・・・」
そういえば今回、行きのバスでアンケートとテストを行ったのだ。アンケートはあめんぼ1〜な人はというやつで、テストというのは漢字やら英文やらを問われたもんだった。今まで出てきてないってことは、この飲み会のネタになるっていうことになる。
理系だった僕や吉野には、現代社会なんてテストを行っても蚊トンボみたいな結果になるのは見えてたので、半ばあきらめる形で飲みを迎えたのである。
「それじゃあ、かんぱーい!」
実行委員長や、合宿担当の先輩からのあいさつも終わり、僕は目の前のサラミをつまみながらチューハイをキメるなどしていた。結構平和的に進むもんだな、と思ったのも束の間、
「それじゃ、お待ちかねの〜」
なんかそんな声が聞こえるから熱さもひいていくというもの、一気に現実に戻される。
「あめんぼランキングの発表です!」
最初は、テストではなくアンケートの方の発表らしい。先延ばしになったので、嬉しいようなさっさと終わらせてほしいような・・・。
お父さんぽいとかペットっぽいとか、そーゆーものがメインだったが、その中に明らかに異色なものがあった。僕はそれをすごく恐れていたのである。
「じゃあ次、1番オタクっぽい人は〜」
神よ、両手を合わせて祈りをささげた瞬間である。いや僕のことをよく知っているのであれば間違いなく票は僕のもとに集まるであろうよ。
「B大の〜」
ほらきた、もう立ち上がってコールを受ける準備でもしてしまおうか。と思っていたら、吉野と目が合った。喜々とした目で僕を見やる。諦めたのか?それとも僕が選ばれると確信しているのか、なんかもうどっちでもいいよ。
「吉野君です!」
一瞬、僕はすごくポカーンとした顔になったと思う。たぶん目の前の吉野のような顔になっていただろう。まぁ言えることは、確実に吉野の顔が青ざめつつあるってことで。
「えぇーーー!?なんで俺がっ」
いや僕もそう思うよ、なんで吉野が選ばれたんだろ。まぁ自分が選ばれなかったんだしどうでもいいや。
「危ね、助かったよ吉野」
「うるせぇよお前!」
「これでB大のメンツは保ったな!マジおめでとう!」
余談だが、僕らの通うB大学はオタク大学としてあめんぼ内では知られている、いや間違ってないからいいけど。
吉野が唇の端をビクつかせるのを僕は見逃さなかった。まぁ彼も不覚を打ったんだろう。だって僕も吉野も僕が選ばれると思ってたからなぁ・・・。
コールが終わったのか、吉野が疲れたように腰を下ろす。マジ乙。
まぁその他にもネタにされるようなランキングは発表されたけど、僕らに被害が及ぶものはなかった。問題は、むしろこの次の―――
「テストの結果を発表します!」
こっちの方である。どんな結果が発表されるのか、予想すらできない。
目の前の吉野を見ると、若干復活したのか顔がこわばっている。そりゃそうだ、僕だって怖いさ。
「じゃあ上から順番に発表していきます、一位は―――」
まぁ全然関係ないしな、僕の出る番はいつになるのかと思っていたら、
「5位、高井くん!」
すぐに呼ばれた、思考が追い付かない。
「っしゃあああ!」
気づいたら大声をあげて立ち上がっていた。んでもって周りの人と両手を合わせてみる。結構嬉しいなぁ。
「やった!」
「お前・・・裏切るとか」
目の前の吉野が呟く、茫然自失である。
まぁこうなってしまうと僕が危惧していたことはもうすべて終わってしまったので、あとは周囲と一緒に盛り上がるだけだった。いつ吉野が呼ばれるのか気になったが、
「はいこれで4人残りました。残った人は立って!」
とうとう4バカにまで残ってしまった。これはフラグが立ってる気が。
「吉野これまずいんじゃないの?」
「これは・・・シャレにならない」
本当に凹んでいるようだ。まぁ当時は後で労いの言葉でもかけてやろうかと思っていたような気がするが、今になってすっかり忘れているのを思い出した。
「じゃあ、4番目は・・・」
先輩がもったいぶって発表する。
結局、吉野は4番目だった。3バカに入っていたら後にもっと酷いことになっていたんじゃないかと思ってしまう。
3バカも公表されたところで、自由な飲みの時間になった。広瀬のところにでも行ってのんびりしてようかなと思ったら、
いきなり肩をつかまれ体をゆすられた。
「たーかーいーー!」
望月さんその人である、隣にいたのにいつの間にかすっかり出来上がっていた。
僕の体は前後に大きく揺れる。刻が・・・。
「望月さん・・・ちょっと、やめ・・・」
おかまいなしに揺さぶり続ける。ようやく誰かが止めに入ってくれたのか、いきなり解放されたので畳に倒れこむ。顔をあげると、望月さんを窘める冬野先輩、森さん、千葉さんの姿があった。
「今のマジで危険だったから」
「ちょっと高井君が死にそう」
3人がかりだったら止められるか、森さんあたりが「大丈夫?」と声をかけてくれる。ここで軽口でも叩ければいいんだけど、そんな余裕なんてなかった。目の前の酔っ払いが僕の肩に手をかける。またか、
「望月、3分間高井には触れるな。数えててやるから」
冬野先輩の提案である。それが僕の猶予なのか・・・今考えると、部屋に逃げ込んでしまうってのもありだったのかもしれない。
刻々と過ぎていく、平和な時間。噛みしめるように会話を楽しむ。目の前の望月さんがうずうずしているのがわかる。僕ってなんなんだよ。
3分がたつ頃には、冬野先輩は違う人たちと飲んでいた。見捨てやがったよ・・・。
その後しばらくはよく覚えていない。ぶんぶん振りまわされたような気もするし勢いで首を絞められたような気もする。とにかく、記憶がはっきりした時には近くに広瀬と千葉さんがいた。
「高井、大丈夫か?ほら、水飲みなよ」
「息が切れてるけど・・・」
千葉さんが言い終わる前にまたも望月さん襲来である。2人して宥めてくれてほんと嬉しいよ僕は。


「高井はさー、誰にしたんだよ?彼女のところは」
ところかわって周囲にはまた望月さんと千葉さんと森さんがいた、一応平和なひとときである。望月さんが僕に訊ねた。
「いや、誰って・・・」
「もったいぶるなよ〜w」
「そうだよ、言っちゃいなよー」
煽る望月さんと森さん。あめんぼランキングには一番上の項目に、彼氏/彼女にしたい人は?というものがあった。僕は結構考えたんだけど、空白のまま出した気がする。
「いや、確か考えたんだけど空白で出したような・・・」
「嘘つけよ〜」
あー望月さん出来上がってたんだっけ。他の人も聞き入っているし・・・どうしようか悩んでいたら、ふと千葉さんと目が合ってしまった。
その時僕は閃いてしまった。このもどかしさをさっさと切り抜ける方法。この合宿最大の過ちである。
「・・・えーっと、」
と言って、軽く指さした。千葉さんの方を。
「千葉なの?」
森さんが訊いてくる。そうです、と軽く言うように会釈する。
「・・・」
千葉さん、驚いたように僕を見てくる。そりゃあそうか、目の前のよくわからん男に半ば告られたようなもんだもんなぁ。
「千葉告られちゃったねぇ〜どうすんのよ〜」
森さんが茶化す。望月さんが僕の肩をポンポンと叩く。そして、僕はぐわんぐわんとまた揺さぶられたのだった。
後に聞いたが、吉野君は飲みの場を抜け出して一人で飲んでいたらしい。ガチ凹みをしてたのか、頭が上がらないなぁ。


その後、飲みも一段落し、僕は石原先輩、広瀬と部屋に戻った。主にサークルの黒い話を聞くためである。
2年の夏の時期は、3年の引退の時期が迫ってくるからか、次期役職を決める結構ドロドロした時期になる。石原先輩はあめんぼやサークル内の運営や役職についてドス黒い話をしたり、広瀬は自分の入っているサークルについての悩みを打ち明け、僕も不安になっていることをいくつか相談した。
そんな黒い話をひそひそとしていると、ふと部屋の戸が開いた。吉野君その人である。
吉野君も出来上がっていたのか、壁によりかかるように腰を降ろした。
「吉野、今黒い話してるんだけど、お前も入るか?」
石原先輩が訊く、
「いいっすね、じゃあ俺も先輩からいろいろ聞きたいです」
お前次期会長だからちょうどいいじゃん、と思ったら
「ちょうどいいな、じゃあ会長の引き継ぎここでやっちまうかw」
とか石原先輩が言い出す。同じこと考えてたのか、まぁゆるい方が僕としては嬉しいからいい。
そこから4人で話をしたんだが、途中から吉野のネガティブさに他3人がドン引きしてしまった。
「俺は一番サークルで嫌われてると思うけど〜」
「正直信頼されなくてもいいっす」
「俺が会長になってよかったとでも思ってんですかねぇ」
途中ぶん殴ってやろうかと思ったが、これはさっきの飲みで凹んだからだろうと思って適当になだめておいた。酔いすぎな感も否めなかったしね。
「ちょっと、トイレ行ってきますね」
しばらくした後、そう言って退出する。内輪話はちょっと中断。


すぐにさっきの部屋に帰るのもつまらない、他の部屋も見てみようと隣の部屋を開けると―――
変な光景を見た。事態は思わぬ方向に進んでいたらしい。
「高井、私電話したんだよ・・・?」
千葉さんに上目遣いで声をかけられる。千葉さんは部屋に腰を下ろした形で、僕を見上げていた。
その姿勢にちょっとクラっときたのは内緒、それ以外にもイレギュラー要素があり、僕はそれを見て固まってしまった。頑張って声を絞り出す。
「なんなの、これ、ねぇ」
「すごいでしょ」と森さんが横から声をかけてくる。反対側には堀さんが、
そして、目の前の千葉さんは三浦に肩に手をまわされた状態で、僕を見上げている。
「なぁ、なんなんだよこれ。説明してくれない?」
理解できない状況だったので、僕は横の2人に説明を求めた。だが、それを遮るように、
「高井、なに勝手に告白してんだよ!」
三浦が声を張り上げる。君が説明してくれるの?
「俺も千葉が好きだったんだからさ〜」
あぁ、把握した。でも納得はできないなぁ。
「さっき三浦がこの部屋に来てさ」
「千葉に告ったんよ」
森さん、堀さんから捕捉される。とりあえず理解した。
どうやら三浦は僕よりも少し前にこの部屋にきて、千葉さんに告ったらしい。酔った勢いなのかな。場所もへったくれもないし・・・。
相変わらず千葉さんは僕を見ている。どうしようかちょっと悩んだけど、助けてほしいんだと僕の頭は勝手に判断する。
僕も酔っていたのかな?じゃないとこんなこと絶対にしない。
「三浦、なにやってんだよ」
そうやって三浦から千葉さんを引きはがし、肩を抱き寄せる。「おおー」と近くで歓声が沸いたが気にしないでおく。
自然と僕と三浦は視線を交わらせる。にらみ合うような形で。
「三浦が千葉さん好きなの、知らなかったなぁ」
こいつは昨日の会話で少し前に彼女と別れたのを聞いていた。そこが納得できないから僕は切り込む。
「三浦さぁ、彼女と別れたばっかないでしょ?そこらへん説明してよ」
森さんの意見は鋭かった。でも三浦も負けじと返す。
「確かにちょっと前に別れたけど、でも千葉のことは〜」
次第に女子二人にフルボッコにされる形になる三浦、さすがにちょっと可哀想だと思い、少し離れた場所で傍観する。気づいたら千葉さんも横で座ってる。
「いやぁ、大変なことになったね〜」
「うん・・・」
千葉さんに労いの言葉をかけたものの、すぐに僕も当事者じゃんってことに気づいて、頭をかく。僕が作ったようなものなのに、こんなにのんびりしてていいのかなぁ。
「って、聞いてる?」
三浦が尋ねる。そりゃ聞きたくもなるか、完全に森さん堀さんとの弁論みたいになっちゃってるし、
「まぁ、しょうがないか」
「なにが?」
「ごめんね千葉さん、俺から言うのもなんだけど三浦のこと聞いてあげてくんないかな。一応真面目そうだし」
告ったのに何言ってんだろうね僕は。でも三浦に同情してたらしいよ。僕も酔ってたのかなぁやっぱり。
「え・・・」
千葉さんが困惑している。しょうがないよねそりゃ。
「じゃあ、ウチらは邪魔だし外出てよっか?」
示し合わせたかのように出て行こうとする3人、本当に何考えてるんだろうね、僕らは。


隣の部屋に戻ったとき、部屋には石原先輩、広瀬、それから僕と森さん。堀さんは先輩の部屋に麻雀をしに行ったらしい。
「千葉モテモテだねぇ〜」
いや、その告った片割れは僕ですよ?答えに困ったので、あいまいに返事をする。
「だって今まで付き合ったこととかなかったみたいだよ?いきなりだよね〜」
うわぁ、僕はそんなにウブい子を引っかけようとしてたのか。ってか千葉さんからすると災難以外の出来事じゃないよなぁ。
その後三浦が千葉さんに告ったことを話の肴にしつつ(あんまり僕が笑えたことじゃないが)話をした。
しばらくし森さんが部屋を出た後、望月さんが部屋に入ってきた。
「高井、知ってるか?三浦が千葉に告ったんだってよ!」
知ってるよ、見てきたからと返し、再び会話が盛り上がる。
望月さんに応援され、適度に胸にトゲが刺さった頃合いに、またも黒い話に突入した。
僕は望月さんに訊きたいことがあった。あめんぼで吉野と同じ班だった望月さんに、彼への評価を尋ねたかったのである。
「ねぇ、吉野のこと、どう思う?」
ストレートに訊いた。その方がいいと思ったから。
「いや、あいつが会長になるって聞いた時、何考えてるんだろうって思ったよ・・」
ストレートに返ってきた。なんか聞く限りやばそうだぞ。
詳しく尋ねたが、A班での吉野の評価はなかなか低かったらしい。練習にもあまり来なかっただの、上から目線だの、他の女子から聞いた話だの、いろいろとボロクソに言われてしまった。
石原先輩が額を抑えている。僕もため息をつく。
その後、2人でどうやって吉野を降ろそうか、という話し合いをした。


結局、僕と広瀬が寝たのは5時頃である。あの後吉野はさらに出来上がって帰ってきて、そいつを抑えて、寝るように3人で強く言い聞かせたものの2,3分後には元気な声で復活しやがる。
僕と広瀬はげっそりして、他大の先輩方にも結構心配され、2回だと吉野がうるさいからという理由で1階で布団を敷いて寝た。
吉野が寝たのがいつになったかはわからない、あと石原先輩は結局寝たのだろうかもわかんないままだ。
いろんな懸案事項を置きっぱなしにして、僕と広瀬は泥のように眠った。